「どこを切っても同じ顔」が、AIに選ばれる理由になる——小さなお店が、AI時代に整えておきたいこと
この記事は、Webの専門家の先生にお伺いした話と、それを受けて私が考えたことの記録です。先生のお話と私の考えは、分けて書いています。
私はふだん、小さな会社やお店のマーケティングとブランディング、とくに「自分たちの良さを言葉にする」お手伝いをしています。
最近、ある小さなスタジオのサイトについてのご相談の場で、Webの専門家の先生のお話を伺う機会がありました。私とは違う、Webと検索の側からの視点です。聞いていて、ふだん私が言語化の支援で大事にしていることと、別の方向から理解がつながる感覚がありました。忘れないうちに、ここに記録しておきます。
心と体を整えることを大切にしているスタジオで、長く、リピーターの方を中心に続けてきた場所です。独自の世界観があって、それを好きで通い続けている人たちがいる。一方で、これからは新しい方にも来てほしい。その世界観を崩さずに、初めての人にどう届けるか。
こうしたご相談は、小さなお店や教室からよくいただきます。そして今回のお話で、この問いに答えるときに、AIの存在を抜きにしては考えられなくなってきたとあらためて感じました。
先に、この日先生から伺ったことを並べておきます。
- 来てほしい人だけでなく、対象にしない人も決める
- AIには、単語ではなく本音で相談される。集客の前提が変わりつつある
- 発信に一貫性がないと、人は「怪しい」と感じる。どこを切っても同じ顔でいること
- サイトは、スマホで縦に読み進める前提で作る
それぞれについて、先生のお話と、それを受けて私が考えたことを書いていきます。
AIには、単語ではなく本音で相談される
先生のお話 これまでの検索は、単語で調べるもの。でも生成AIには、「最近イライラする」のような具体的な本音で相談する。AIはサイトの中身を読み込んで、その人に合わせた提案をする。生成AIは「話し相手」になりつつある。
これを聞いて、なるほどと思いました。
検索するとき、私たちは「業種名 地域名」「〇〇 おすすめ」のように、短く、少し他人行儀に単語を打ちます。ところが、ChatGPT のような生成AIに向かうときは、「最近ずっとイライラしていて、気持ちを落ち着けたい」「肩こりがひどいけど、激しい運動は苦手」と、検索窓には打たないような本音をそのまま相談しています。私自身もそうです。
| これまでの検索 | 生成AIへの相談 | |
|---|---|---|
| 入力するもの | 単語(業種名+地域名など) | 状況や気持ち(「最近イライラする」) |
| 返ってくるもの | ページの一覧 | その人に合わせた提案 |
| 役割 | 調べる道具 | 話し相手 |
こうした、AIの回答の中で選ばれるための工夫は、「AIO対策」や「GEO対策」と呼ばれています。言葉は新しく、難しそうに聞こえます。でも私は、中身は意外と地に足のついたものだと考えています。
AI経由の人は、決めてから来る——指名検索が増える理由
先生のお話 AI経由でサイトに来た人のほうが、問い合わせや申し込みにつながりやすいと言われている。AIの回答を見たあとで、店名を改めて検索する(指名検索する)動きもある。
私は、これは自然なことだと考えています。AIとのやりとりの中で、自分の悩みを話し、提案を受け、ある程度納得してから来ている。比べている途中ではなく、ほぼ決めてから来ているんです。そして、AIに勧められた場所を、自分の目で確かめに行く。それが指名検索なのだと思います。
ここで、次の話につながります。
どこを切っても同じ顔でいる
先生のお話 発信内容に一貫性がないと、見る人は「怪しい」と感じる。サイト、SNS、AIの回答など、どこを切っても同じ顔になっていることが大事。
確かめに来た人が見るのは、サイトだけではありません。SNSも見ますし、口コミも見ます。もう一度AIに聞き直すこともあるでしょう。
AIでは穏やかで丁寧な場所として紹介されていたのに、サイトに来たら売り込みの強い言葉が並んでいる。SNSでは、また別の雰囲気。そうなると、人は「どれが本当なんだろう」と身構えます。せっかく決めて来てくれた人が、最後の最後で引き返してしまう。
私は、この「どこを切っても同じ顔」が、AI時代の集客でいちばん大事なことだと考えています。そして、同じ顔でいるためには、その顔が何なのかを先に決めておく必要があります。ここからは、その準備の話です。

同じ顔をつくる①:来てほしくない人を決める
先生のお話 ターゲットは「誰に来てほしいか」だけでなく、「誰を対象にしないか」でも決める。初めての人が入口にする検索は「業種名+エリア名」が多く、抽象的なワードで集客するのは難しい。
「誰を対象にしないか」と聞くと、少し冷たく感じるかもしれません。でも私は、ここに大事なことがあると思いました。全員に好かれようとすると、言葉はどんどん丸くなって、顔がぼやけます。「どんな方でも歓迎です」と書いたサイトは、実は誰にも刺さらない。対象にしない人を決めると、残った人に向ける言葉がはっきりします。
これは、ブランディングの支援で私がいつもお伝えしていることと同じです。言語化は、「何を言うか」と同じくらい「何を言わないか」を決める作業だからです。
入口の検索の話は、Webの側から見た大事な補足でした。大切にしている世界観は、抽象的なことばで語りたくなるものです。でも、入口はあくまで具体的な言葉で開けておく。そのうえで、中に入った人に世界観をしっかり伝える。入口と中身で、役割を分けて考えるということです。
入口の置き方については、以前「入口をどこに置くかで、サイトの作りは変わる」という記事でも書きました。
同じ顔をつくる②:自分たちの言葉で原稿を整える
先生のお話 AIに選ばれるには、サイトの原稿をマークダウン形式で構造的に整理して、裏側(メタタグなど)に反映しておく方法がある。見た目に出す必要はない。そして「媚びないけど、守っていく」姿勢で、自分たちの感覚に近い言葉で表現することが大切。
技術的なやり方は、まさに先生の専門の領域です。私が聞いていてはっとしたのは、その手前にあるものでした。整理する原稿が、自分たちの言葉で書かれているかどうか。 これは、私がふだん言語化の支援でいちばん時間をかけているところです。
「媚びないけど、守っていく」という言葉は、とてもいいなと思いました。検索されやすい言葉に寄せすぎて、自分たちらしさを手放すのではない。かといって、分かる人にだけ分かればいいと閉じるのでもない。自分たちの感覚に近い言葉で、でも初めての人にも伝わるように表現する。
AIは、サイトに書かれていることをもとに、相談してきた人に合わせて紹介します。借り物の言葉で書かれていれば、借り物の顔で紹介される。自分たちの言葉で書かれていれば、その顔で紹介される。そう考えると、原稿を整えることは、AIのためというより、自分たちの顔を決める作業です。言語化の仕事が、AIの時代にはそのまま「見つけてもらう力」につながる。ここが、今回いちばん理解がつながったところでした。
器は、スマホで縦に読み進める前提で
先生のお話 Google はモバイルファーストインデックス(スマホで見たときのページをもとに評価する)。スマホで縦に読み進める構成を前提に設計する。
実際に、初めての人の多くはスマホで見に来ます。パソコンの画面で見栄えのいいレイアウトを考えるのではなく、スマホで縦に読み進めていく流れを前提に構成を考える。上から順に読んでいったときに、世界観が伝わり、知りたいことが分かり、次の一歩が見える。私も、そういう並びにしておくことが大切だと考えています。
世界観を守ることと、新しい人に届けることは矛盾しない
ここからは、先生のお話を伺って、マーケティングとブランディングを支援する立場から私が感じたことです。
一つは、順番が大事だということです。このスタジオでは、「何を伝えるか」というブランドの方向性を、先にしっかり固めていました。だからこそ、「どう見つけてもらうか」という話を、迷わず具体的に考えられた。何を伝えるかが決まっていないうちに見つけてもらう方法を考えても、話は空回りしてしまいます。
二つめは、AI経由の人は決めてから来るという話と、「どこを切っても同じ顔」という話が、一本の線でつながっていたことです。世界観を守りながら新しい人に届けたい、という課題への答えは、そこにありました。世界観を守ることと、新しい人に届けることは、矛盾しない。むしろ、世界観がはっきりしているほど、AIにも人にも、同じ顔で伝わりやすくなる。
三つめは、これは小さな事業者ほど大事なことだ、ということです。大きな会社のように、お金をかけて露出を増やすことはできません。でも、自分たちらしい言葉を整理しておくことなら、今日からでもできます。それが、AI時代の集客の土台になると私は考えています。
Webの視点と、言語化の視点。入口は違っても、行き着く先は同じでした。
自分たちらしい言葉は、きれいごとからではなく、本音から出てきます。私が「本音から始める」ことを大事にしているのも、同じ理由です。
ポイント
- 来てほしい人と同じくらい、対象にしない人を決める。 顔がはっきりし、言葉が届きやすくなります
- 入口は具体的な言葉で開けておく。 初めての人の検索は「業種名+地域名」が中心です
- AIには、単語ではなく本音で相談される。 AIはサイトを読み込み、その人に合わせて提案します
- AI経由の人は、決めてから来る。 AIの回答を見たあと、店名で確かめに来る人もいます
- どこを切っても同じ顔でいる。 一貫性がないと、人は「怪しい」と感じます
- 原稿は、自分たちの言葉で整える。 媚びないけど、守っていく
- サイトはスマホで縦に読む前提で。
事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。
ツールの相談から始まって、気づけば「自分たちは何屋なのか」を言い直している。そういう仕事を、私はしています。
中山 幸子
ほかの記事
- 業務棚卸のやり方とフォーマット——システムを入れる前に、何をどこまで書き出すか
業務棚卸とは、会社の中の仕事を書き出して、誰が何をしているかを見えるようにする作業です。進め方の5ステップと、そのまま使える業務棚卸表(Excel)を載せました。システムを入れる前の棚卸しで見るところ、きれいな建前しか出てこないときの聞き方も、支援の現場から書きました。
- 本音が出ると、何が起きるか——自分事になる、要件が絞られる、続く
CRMを選ぶ会議で「面倒くさいことはやりたくない」と言った営業の方が、いま一番入力しています。本音が出ると、ツールは自分事になり、膨らんだ要件は本質に絞られ、入れたあとも続きます。決め方を変えるのではなく、本音が出る場所を一つ足す。ツールの選定と定着に立ち会ってきた中で見てきたことを書きました。
ツールの前に、話をしよう。
まずは一度、話してみませんか
「何から手をつければいいか分からない」の段階でかまいません。現状をうかがって、優先順位を整理するところからご一緒します。初回のご相談に費用はいただいていません。