「うち、ITリテラシー低いんです」と言われたとき、私が見ているところ

初めてお会いしたとき、名刺交換のあとしばらく、ご自分がどれだけITが苦手かを話される方がいます。

パソコンは苦手で、スマホもよく分かっていなくて、若い人みたいにはできなくて。10分近く続くこともあります。

よくあることです。そして正直に言うと、私はそこをあまり見ていません。

見ているのは、別のところ

顧客管理のお話をしていて、「この会社は早いな」と思う瞬間があります。

こういう言葉が出てきたときです。

「休眠客って、新規で取るより効率いいですよね」

ツールの話でも、機能の話でもありません。自分の現場で、体感として掴んでいることです。

ITにとても詳しくて、でも営業現場は毎日こなしてきただけ、という方よりも、詳しくなくても考えながら動いてきた方の方が、話が早い。乗ってきてくださるのも、圧倒的に後者です。

新聞販売の会社で、あったこと

新聞の販売をされている会社のお話です。

顧客管理のツールは、何も入っていませんでした。それぞれの営業が、自分の担当先を自分のやり方で管理している状態です。営業を拡大したい、というところから、ツールの導入についてご相談をいただきました。

手書きの顧客名簿を指さす手と、ノートに書き留める手

お話をうかがいながら、私はこんな提案をしました。

「ツールを入れて、休眠のお客様を管理しませんか。購読をやめてから3年以上経っている方です。そういう方にもう一度アプローチすると、けっこういいことがあるんですよ」

すると、こう返ってきました。

「それは、すごくやりたかったことです」

私が持ち込んだわけではなかった

ここが大事なところだと思っています。

私が新しい戦略を持ち込んだのではありません。その方がずっとやりたかったことに、名前と手順がついただけです。

だから話が早い。「仕組みさえ揃えば、ぜひやりましょう」となりました。

ITに詳しいかどうかは、この会話のどこにも出てきていません。

腹落ちすると、ツールを待たずに動き出す

もうひとつ、よく起きることがあります。

「やっぱりそういうことが必要なんだ。なるほど、やってみよう」と思えると、ツールを入れるかどうかとは関係なく、まずは自分たちで手作業でできることから始めてみよう、となるケースです。

これは、とても良い進み方だと思っています。

ツールがあるからそこに業務を合わせる、という順番より、ずっと早い。そして何より、自分たちが腹落ちした状態で運用が始まります。続くかどうかは、たいていここで決まります。

操作のハードルは、実際に下がっている

もう少し実務的な話もしておきます。

ツールの画面は、この数年でどんどん簡単になりました。そこにAIが入ってきて、データを入れることも、取り出すことも、かなりシンプルになっています。

「どのボタンを押せばいいか分からない」「どの画面に行けばいいか分からない」——導入でつまずく典型的な場所ですが、ここは昔ほどの壁ではなくなってきました。

ですから、ITに詳しいかどうかや、年齢的な苦手意識といったところは、差がつきにくくなってきていると感じます。

とはいえ、関係する場面もあります

正直に書いておくと、リテラシーがまったく関係ないわけではありません。

社内に触れる人が一人もいない、共有の仕組みがそもそもない。そういう状態だと、最初の一歩には時間がかかります。

ただ、それは教えれば済む種類の問題です。手順は覚えられますし、慣れます。

一方で、「自分の現場で何が起きているか」を考えてきたかどうかは、教えられません。時間をかけて、その方が自分で積み上げてきたものだからです。

そして多くの場合、心配されている方は、それをちゃんと持っておられます。

苦手な話も、聞かせてください

ここまで読んで、「苦手の説明はしなくていい」と言われたように感じた方がいるかもしれません。そうではないんです。

ITが苦手だという話を長くされる方は、不安を預けてくださっているのだと思っています。過去にツールで痛い目に遭った。社内で自分だけ分かっていない気がする。若い社員に聞くのが、少し気まずい。そういうことが後ろにあることが多いです。

それは、聞かせていただいた方がいいです。どのあたりでつまずきそうかが分かりますし、進め方も変わります。最初の設定まで私が入った方がいい会社なのかどうかも、その話で決まります。

ですので、遠慮なく話してください。

そのうえで、もしよければ、こちらも聞かせてほしいのです。

「うちは、実はこうなんじゃないかと思っているんですよね」

うまく言葉になっていなくて構いません。むしろ、まとまっていない方がいいと思っています。

きれいにまとめようとすると、どうしても情報が落ちるからです。筋を通そうとする過程で、説明しづらいこと、うまく言えないこと、言いかけてやめたことが、こぼれていきます。でも本質は、たいていそのこぼれた側にあります。

ですので、思ったことを、まとまらないまま話してください。整理するのは、こちらの仕事です。

そもそも、分からないから専門家を呼ぶわけです。分かっているなら、呼ぶ必要はありません。ツールを入れるかどうかを決める前の、「そもそも何をしたいのか」を一緒に見つけるところから、いつもやっています。


事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。

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