マーケティングの本質は、手段の話ではないと思っています
「ホームページをどうしたらいいでしょうか」 「SNSをやって、もっと売上を伸ばしたいんです」
ご相談の入口は、だいたいこの形で来ます。
私はマーケティングを仕事にしているので、この質問に答えるのが役目です。実際、答えられます。すでにあるものを、どう見せていくか。 どこに置けば届くか。そこをお伝えしたり、一緒に探していったりするのが私の仕事だという認識でいます。
ただ、帰り道にいつも考えることがあります。この質問に、そのまま答えてしまっていいのだろうか、と。
今日は、マーケティングの本質について書きます。私がずっと考えている、少し深いところの話です。
マーケティングの本質は、教科書のほうでも「売り方」の話ではありません
持論の前に、一般的な整理を短く挟ませてください。
ドラッカーに、よく引かれる一節があります。
なんらかの販売は必要である。だが、マーケティングの理想は販売を不要にすることである
売り込まなくても売れている状態を作ることが理想だ、という意味です。お客さまを理解して、商品がその人に合っている。だから、ひとりでに売れていく。
もうひとつ。日本マーケティング協会が2024年1月に、34年ぶりにマーケティングの定義を刷新しました。
顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである
少し硬い文ですが、私が注目したいのは順番です。「価値を創造し」が先に来ていて、「広く浸透させる」が後ろに来ている。
どちらの説明も、広告やSNSやホームページの話をしていません。価値そのものを作るところから、マーケティングの範囲に入っている。 教科書のほうでも、そう言っているわけです。
いちばん大事なのは、自社の商品を「好きになる」ことだと思っています
そのうえで、私が現場で一番大事だと思っていることを書きます。
自社の商品やサービスをよく理解して、ちゃんと好きになること。
たったこれだけのことなのですが、ここが抜けているまま「うまく見せる方法」の相談に来られる方が、本当に多いのです。
好きになる、というのは気持ちの話をしているわけではありません。自分たちが何を良いと思ってこれを作ったのか。誰に何が起きてほしくて、これを売っているのか。それを自分の言葉で言えるということです。
言えるようになると、伝え方は驚くほど楽に決まります。逆にここが曖昧なままだと、どんな手段を選んでも、書く言葉が出てきません。

手段ばかり考えていると、見えるものが変わってしまいます
マーケティングの手段のほうばかりを一生懸命に考えていると、本来やるべきことを忘れてしまうことがあります。
そして、見るものが少しずつ変わっていきます。
- 「ただ儲かるには、どうしたらいいか」
- 「省力化して、あまり手を動かさずに売上や利益を上げるには、どうすればいいか」
こういう問いのほうに、どうしても寄っていってしまう。
結局のところ、商品のコンセプトや「思い」が曖昧なまま、ただうまくやろうとしても、最終的にはうまくいきません。 矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、そうなのです。
手段だけで数字を作ることは、できます
正直に書いておくと、手っ取り早く成果を出すという意味では、マーケティングの手段だけで数字を作るほうがうまくいくケースも多いです。 これは事実だと思います。
ただ、そこが目的だという方は、ほとんどいないはずです。
どうしても会社が潰れそうで、この先の半年だけでも何とか持たせたい。そういう状況なら、手段だけで数字を作りにいくことも選択肢になります。実際、そのフェーズが必要な会社もあります。
けれども基本的には、事業をずっと長く続けていきたいはずなんですよね。そう考えたときに、やはり戻ってくるのは商品やサービスの話になります。
手段で作った数字は、盤石にはなりません
もう少しだけ、この話を続けさせてください。
手段で作った数字は、やめると戻ります。 広告を止めれば問い合わせが減る。投稿をやめれば見られなくなる。ここは、わりと想像がつきやすいところだと思います。
ただ、やめなければ大丈夫かというと、そうでもないのです。
続けていても、どこかで頭打ちが来ます。同じやり方の効きが鈍っていく。あるいは、トレンドのほうが動いて、数字が勝手に上下する。プラットフォームの仕様がひとつ変わるだけで、前月までの前提が消えることもあります。
やめると戻る。やめなくても、いずれ揺れる。 どちらにしても、盤石にはならないんですよね。だからずっと動かし続けていればいい、という話でもないのだと思います。
マーケティングが本来やるべきなのは、機会損失を埋めることです
では、マーケティングの仕事は何なのか。
私は、こう考えています。
良さが伝わっていないせいで買われていない。その機会損失に対して、良さを届けるための表現や手段を構築すること。
本来は、このアプローチが起点になるはずなんです。
良いものがある。でも伝わっていない。だから買われていない。その差を埋めるのがマーケティングの仕事で、ホームページもSNSも広告も、その差を埋めるための手段のひとつでしかありません。
ここが抜けたまま手段だけをうまくやろうとしたり、「ホームページをどうしたらいいか」「SNSをやってもっと売上を伸ばしたい」という話に終始してしまうと、そこに至るまでの検討内容が見えてこないのです。
「売上を上げたい」だけを起点に考えた結果がそれだとしたら、少し考えが浅いのではないか。正直なところ、そう感じてしまうことがあります。
作って、市場に当てて、評価する。本来はそれだけのことです
自分の伝えたいことを、ちゃんと商品にしていく。ちゃんと商品にして、市場に当てる。そして、市場からのフィードバックを評価する。
受け入れられるなら、その路線で行く。ダメなら調整する。あるいは、撤退も考える。
ビジネスである以上、本来はただそれだけのことなんですよね。
順番にすると、こうなります。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1 | 自分たちの商品を理解して、好きになる |
| 2 | 伝えたいことを、ちゃんと商品の形にする |
| 3 | 市場に当てる(ここで初めて手段の話になります) |
| 4 | 返ってきた反応を評価する |
| 5 | 続ける/調整する/撤退する を決める |
ご相談の入口である「ホームページ」や「SNS」は、この3番のところです。3番だけを取り出して良くしようとしても、1番と2番が空白だと、何を載せればいいのかが決まりません。 私が現場で立ち止まるのは、だいたいここです。
「やり方」より、「あり方」
今日、ヨガ教室をされている事業者さんとお話ししていました。
その方が言っていたのは、ヨガではやっぱり「あり方」がまず起点であって、すごく大事だということでした。「どうやっていくか」よりも「あり方」だと。
聞きながら、会社もまさにそうだなと思っていました。
何のためにこの事業をやっているのか。誰に何を届けたいのか。そこが決まっていれば、やり方はいくらでも変えられます。 逆に、あり方が決まらないまま、やり方だけを次々に変えていくと、変えるたびに元の位置が分からなくなっていきます。
それでも、理想どおりにはいきません
「あり方」がない、あるいは自分でもよく分からない。そういう状態から始まるとき、本当はそこから支援していきたいと思っています。
ただ、これは理想として持っている、ということです。
状況によっては「どんな手段を使ってでも、一旦売上を伸ばす」というフェーズがあるのも理解しています。実際にそういう場面にも立ち会いますし、そのときは、そのお手伝いをします。
ただ、売上が上がった後にどうするのか。 そこまでちゃんと考えないといけないなと思うケースが、よくあります。
理想は必ずしもその通りにはいかない、と理解した上で。それでも「本来はそこだよね」ということは忘れずにいたいと、すごく思っています。
小手先で数字を上げることだけをゴールにしない。マーケティングの本質のところを、私はとても大事にしたいですし、そういう会社が増えてほしいと思っています。
ポイント
- マーケティングの本質は、売り方の技術のことではありません。 ドラッカーも日本マーケティング協会の定義も、価値を作るところからをマーケティングの範囲に入れています
- 一番大事なのは、自社の商品を理解して、ちゃんと好きになること。 何が良いのかを自分の言葉で言えるようになると、伝え方は楽に決まります
- 手段ばかり考えていると、問いのほうが変わっていきます。 「ただ儲かるには」「省力化して売上を上げるには」に寄っていきます
- 手段で作った数字は、やめると戻ります。 やめなくても頭打ちが来たり、トレンドで揺れたりします。どちらにしても盤石にはなりません
- マーケティングの仕事は、良さが伝わっていないせいで買われていない、その機会損失を埋めること。 ホームページもSNSも、その手段のひとつです
- 作って、市場に当てて、評価する。 受け入れられれば続け、ダメなら調整する。本来はそれだけのことです
- 「どうやるか」より「あり方」。 あり方が決まっていれば、やり方はいくらでも変えられます
営業の流れの整理については営業が属人化していて、状況が見えない、ホームページの中身が決まらないという話についてはサイトを更新したいが中身が決まらないのページにも書いています。
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