ツールを選ぶ前に決めておくこと
「どのCRMがいいですか」というご相談をよくいただきます。
機能比較表をお出しすることはできます。ただ、その前に決まっていないと、どれを選んでも同じ結果になってしまうことがあります。
機能を比べる前の三つの問い
一つめ。何を管理したいのか。
「顧客管理をしたい」という言葉の中身が決まっていないケースは、実は非常に多いです。
たとえば、お客さんとの接触履歴を管理したいのか。電話をかけた、メールを送った、アポで訪問した。こうした活動を顧客ごとの時間軸で追いかけたい、という話なのか。
それとも、顧客がいまどの状況にあるかを見たいのか。まだリードの段階なのか、商談が始まっているのか、見積を出して返事待ちなのか。案件をフェーズの軸で並べて、全体を俯瞰したいという話なのか。
似ているようで、この二つは画面の形も、入力の設計も、まったく違います。両方できるツールもありますが、両方を最初から回そうとすると、たいてい入力が続きません。
さらにもう一段、掘り下げておきたいことがあります。管理したデータを、どう活用するのかです。溜めた履歴を見て何を判断するのか。誰のどんな行動が変わるのか。ここまで考えて初めて「何を管理したいか」に答えが出ます。「難しいことはいいから、簡単に管理したいだけ」という場合でも、この整理は省けません。むしろ簡単にしたいなら、管理する項目を思い切って絞る必要があるので、なおさら要ります。
二つめ。誰が入力し、誰が見るのか。
入力の側は、一番よく抜ける論点です。仕組みとしては完璧でも、入力する人にとって面倒なら、データは溜まりません。データが溜まらなければ、分析もフォローもできません。導入前に「この人が、この場面で、これくらいの手間で入力する」まで具体的に描けているかどうかで、結果は大きく変わります。
そして、見る側の整理も同じくらい大事です。入力した本人が自分の活動を振り返るために見るのか。管理職がメンバーの動きをまとめて見るのか。営業とマーケティングのように、部門をまたいで横断的にデータを見たいのか。
誰が見るかによって、必要な集計の形も、権限の設計も、選ぶべきツールも変わります。「全員が全部見られるように」と欲張ると、誰にとっても見づらい画面ができあがります。
三つめ。何がどうなったら成功なのか。
「業務効率化」では曖昧すぎます。問い合わせから初回連絡までの時間なのか、失注案件の再アプローチ件数なのか。測れる形にしておかないと、入れたあとに評価ができません。
この整理は、ベンダーに任せられない
三つの問いは、ベンダーに聞いても答えは出てきません。自社の業務と現場の実態を知っている人にしか整理できない、というのが一つめの理由です。
ただ、理由はもう一つあります。こちらの方が根深いかもしれません。
ベンダーに相談すると、話がベンダーの都合に寄っていくのです。悪気があるわけではありません。ベンダーは自社の製品でできることを軸に話を聞くので、こちらの曖昧な要望を、自社製品で実現できる形に解釈して返してきます。
「つまり、こういうことですよね」
こう言われると、事業者さんの側は「そうなのかな」と、そちらに意見を合わせてしまいます。本当はまだ言葉になっていなかった本質が、相手の解釈に上書きされて、捉えきれなくなる。これは本当によくある話です。
状況が自分たちでも見えていない段階で誰かに相談するのは、それ自体に危険があります。言いくるめられないためには、自社としてのスタンスを固めてから、ベンダーとの話に臨む必要があります。スタンスといっても大げさなものではなく、先ほどの三つの問いに自分たちの言葉で答えられる、ということです。
私の関わり方
では、その整理を私のような外部の人間が手伝うとき、何が違うのか。
私は、場面によって振る舞いを変えています。判断材料が揃っていて経験がものを言う場面では、はっきり意見をお伝えします。一方で、あえて意見を言わない場面もあります。事業者さん自身の意見がまとまることの方が大事な場面です。
外から答えを持ち込んでしまえば、ベンダーの言いなりが私の言いなりに変わるだけで、構図は同じだからです。自分たちの言葉で「これがやりたい」と言えるようになって初めて、ベンダーと対等に話せるようになります。
社内だけで整理しようとすると、部門ごとに言い分が違って進まないことも多い。だから外から入って交通整理をする。ただし答えは事業者さんの中から出す。そういう役割です。
ツール選定の相談としていただいた案件が、実際には業務の棚卸しから始まる。よくあることです。そして、そこをきちんとやった案件ほど、導入後に定着します。
ほかの記事
- CRMが何度も定着しなかった会社で、現場の負担を増やさずに請求漏れを止めた話
顧客管理ツールが何度も定着しなかった会社で、新しいシステムを入れずに受注と請求の漏れを止めた実例。共有フォルダとAIの週次リストだけ。一番変わったのは、社長の表情でした。
まずは一度、話してみませんか
「何から手をつければいいか分からない」の段階でかまいません。現状をうかがって、優先順位を整理するところからご一緒します。初回のご相談に費用はいただいていません。