知識よりも、現場を巻き込めるかどうかです——生産管理ツールの乗り換えで、いちばん効くこと

今日は、製造業の支援先でのお話です。

大手の生産管理ツール(機械システム系のもの)が入っています。ただ、数年前に成り行きで導入したもので、当時の経緯を知る人が、もう社内に誰もいない。現場には不満がたまっている。かといって、乗り換えるべきなのかどうかも、誰も判断できない。

社長さんに、ITの専門家を採用したり、情報システム部門を立ち上げたりする気配はありません。いろいろな要因が重なって、「どうしたらいいか全然分からない」という状況でした。

こういう会社、実はとても多いと思います。

乗り換えは、1年半を見ておいてください

まず、時間の話からします。

規模にもよりますが、生産管理ツールの乗り換えは、業者選定だけでも1年以上はかかります。 「やろうかな」と検討を始めた段階から数えると、1年半くらいは見込んでおいたほうがいいです。

なぜそんなにかかるのか。自社の業務フローを把握できていないケースが、非常に多いからです。

ツール選びは、「良さそうなものを選ぶ」作業ではありません。自社の業務の流れをきちんと可視化して、確認してからでないと進みません。外部のコンサルタントを入れたとしても、業務の整理だけで1年ほどかかることは珍しくない。決して簡単に考えられるプロジェクトではありません。

ツールを選ぶ過程で、言葉になっていなかった自社の業務が見えてくる。これはどの業務でも起きることですが、生産管理は、その「見えていなかった部分」がとりわけ深い領域です。

指名されるのは、話が通じやすい人になりがちです

もうひとつ、普段からよくお伝えしていて、今日もお話ししたことがあります。現場を巻き込むことです。

社内にIT専門部門がない場合、社長さんから担当に指名されるのは、総務部や営業部、社長室といった、話が通じやすい幹部寄りの人たちになりがちです。気持ちは分かります。頼みやすいですから。

でも、生産管理のツールなら、使うのは生産現場の人たちです。生産現場のメンバーを数名巻き込んで、部門横断のプロジェクトチームを作る必要があります。

まずは聞く。そして、記録に残す

進め方としては、まずヒアリングから始めるのが確実です。

支援にあたっての細かなコツはいろいろありますが、まずは話を聞き、それを記録に残さないことには何も始まりません。マニュアル類があれば集めて、現状の業務を確認する。現場が感じている課題を、吸い上げていく。

ここまでは、たいていの会社がやります。問題はその先です。

工場の中で、作業着姿の数人がホワイトボードの前に集まっている後ろ姿

聞いたら、必ず何かを返す

ここがいちばん大事なポイントです。現場にヒアリングをしたら、必ず何かしらのフィードバックを返してください。

出てきた課題に対して「すべて解決できます」とは言えません。現段階では、どう対応するかも分かりません。最終的にはボツになる提案も、きっとあります。

それでも、「聞いた意見を受け止めて、その上で検討・処理している」という姿勢を、現場に理解してもらうことが大切です。

やり方は難しくありません。ヒアリングが終わったら、あまり時間を空けずに、サマリーや一覧の形で「現在、こういう課題や意見を把握しています」と社内に共有する。社内メールや社内報のような仕組みがあればそれに乗せてもいいですし、朝礼で共有しても構いません。

「現場が伝えた意見が、スルーされたり握りつぶされたりしていない」と実感してもらうこと。 これが何より大切です。

何年か後に使うのは、その人たちです

なぜそこまで言うのか。

少なくとも数年経った後、新しいツールを使うのは、ヒアリングで意見を上げてくれた方たちです。その時に、「これは自分たちのものだ」と思えているかどうかが、すごく大事なんです。

そうでないと、定着しません。

知らないうちに誰かが勝手に選んで、導入だけが決まって、「上の希望だからやむなく使ってます」という形になってしまう。そうすると、現場は興味を持ってくれないし、定着もしない。「こんな設定はないの?」といった声も出てこない。ただ言われたことだけをやる状態になると、その後が非常に大変です。ずっと誰かが尻を叩いて、入力してもらわなければいけなくなります。

もっと効率的にするにはどうしたらいいか。「こんな使い方があるんじゃないか」。こういう発展的な提案は、現場から出してもらえないと、なかなか前には進みません。誰かが常に尻を叩き続けなきゃいけない状況は、長くは続かないですから。

だからこそ、現場をちゃんと巻き込んで、自分事にしてもらう必要があります。

もちろん、100人いて100人全員じゃなくていい。半分でも、3分の2でも、そう思ってくれる人を増やすことが大事です。実際、私が見てきた現場で、プロジェクトチームを作って「こうやって巻き込もう」と定期的に取り組んだ会社は、ほぼ100%定着しています。

成功か失敗かは、受け止め方に過ぎません

もちろん、ツールの選定がうまくいく・いかない、という面はあります。

でも結局のところ、どのツールを入れても、希望が100%叶うなんてことはありません。だからこそ、自分たちで工夫したり、考えたりしていく必要がある。ベンダーに聞いて解決することも含めて、「社内で困ったな、なんとかしよう」「決めたからには使おう」と思えるかどうか。社員の多くがそう思えているかどうかで、結果はまったく違ってきます。

同じツールを入れても、現場がどれくらいコミットしているかで、成功したと捉えるかどうかが変わります。成功か失敗かなんて、結局は評価や受け止め方に過ぎません。 社員がみんな「成功している」と思えていれば、そのプロジェクトは間違いなく成功なんです。

知識は、ベンダーに聞けば済みます

ですので、単に知識を積み上げることよりも、現場をきちんと巻き込むことのほうが大切です。

もちろん知識も必要です。でも、そんなものはベンダーに聞けば済みます。一番大事なのは、担当になった方が、いかに現場を巻き込んで「やってよかったね」という結果を作り出していけるか。これに尽きると思います。

ポイント

  • 生産管理ツールの乗り換えは、1年半を見ておいてください。 業者選定だけで1年以上。自社の業務フローが把握できていないことが多く、その整理に時間がかかります
  • 担当は、話が通じやすい人になりがちです。 生産管理なら、生産現場のメンバーを数名入れた部門横断チームを作ってください
  • まずヒアリング。そして記録に残す。 マニュアルを集め、現状の業務と現場の課題を吸い上げます
  • 聞いたら、必ず何かを返す。 全部は解決できなくていい。時間を空けずにサマリーを共有して、握りつぶしていないことを実感してもらう
  • 数年後にツールを使うのは、意見を上げてくれた人たちです。 自分事になっていないと、誰かがずっと尻を叩き続けることになります
  • 成功か失敗かは、受け止め方です。 社員の多くが「やってよかった」と思えていれば、それが成功です
  • 知識はベンダーに聞けば済みます。 担当者にいちばん求められるのは、現場を巻き込む力です

システムの入れ替え全般の考え方は基幹システムの入れ替えを検討することになったに書いています。


事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。

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