AIに丸投げすると、どこかで見た会社になる
AIは便利なので、「楽をするための道具」として語られることが多いように思います。
考えなくていい。調べなくていい。書かなくていい。
でも、実際に使ってみると、そこはあまり本題ではありませんでした。
「うちの営業、どうしたらいいですか」
試しに、AIにこう聞いてみたとします。
すると、ちゃんとした答えが返ってきます。案件管理の仕組みを整えて、行動量の指標を決めて、週次で振り返る。属人化を解消し、情報を一元化する。
間違っていません。むしろ、よくできています。
ただ、その答えはどこの会社に対しても、だいたい同じです。業種が違っても、規模が違っても、社内の力関係が違っても。
そして、それをそのまま実行すると、どこかで見た会社になります。
聞き方をひとつ変えるだけで、変わる
同じAIに、こう聞いたとします。
「うちは新聞の販売をしていて、購読をやめて3年くらい経った人にもう一度声をかけるのが効くと思っているんですが、どう思いますか」
ここから先は、まるで別の道具になります。

3年という区切りが妥当か検討してくれる。やめた理由で分けた方がいいと指摘してくれる。誰がいつ声をかけるのかまで、手順に落としてくれる。
違いはAIの性能ではありません。こちらが何を持っていったかです。
このサイトも、そうでした
このサイトは、AIと一緒に作りました。
もし私が「いいコーポレートサイトを作って」とだけ頼んでいたら、たぶん、どこかで見たサイトができていたと思います。実績が並んでいて、強みが3つあって、お問い合わせボタンが右上にある。悪くはないけれど、うちである必要のないサイトです。
そうならなかったのは、「『いい会社ですね』から始まるコンサルティング」という言葉が、先に自分の中にあったからです。
それは打ち合わせの現場で、何十回も自分の口から出てきた言葉でした。AIが考えてくれたのではありません。私が持っていたものを、AIが形にしてくれただけです。
ツールの導入と、まったく同じ
ここまで書いてきて、お気づきかもしれません。
これは、顧客管理ツールを入れるときの話とまったく同じ構造です。
何をしたいかが決まっていれば、ツールはそれを形にしてくれます。決まっていなければ、初期設定のまま、どこの会社とも同じ運用になります。そして、そういう運用は続きません。自分たちのものではないからです。
「ツールを入れたのに定着しなかった」という話を、私は本当に何度も聞きます。原因は、たいていツールの側にありません。
入れる前に、何をしたいかが決まっていなかった。 それだけのことが多いのです。
AIは、その構図をものすごく速く再現します。数分で、それらしい答えが出てしまうので。
楽になるのではなく、映される
だから私は、AIは楽をするための道具ではないと思っています。
自分が何を思っているかが、そのまま出てくる道具です。
持っていれば、加速します。持っていなければ、平均に吸い込まれます。しかも、平均のものがきれいな体裁で出てくるので、持っていないことに気づきにくい。ここがいちばん怖いところです。
嘘で塗り固めることもできてしまいます。それらしい言葉はいくらでも出てくるので。でも、そうやって作ったものは、自分で説明できません。説明できないものは、社内で続きません。
そしてこれは、AIの話ではない
もうひとつ、書いておきたいことがあります。
「自分が何を思っているかが問われる」というのは、AIを使おうが使うまいが、ずっと同じ話です。
ベンダーの提案を比べるときも、コンサルタントを選ぶときも、社員に方針を説明するときも、問われているのは同じことです。自分は何をしたいのか。なぜそう思うのか。
AIは新しい問題を作り出したわけではありません。もともとあった差を、速く、大きくしただけです。
その「思っていること」は、どこから来るのか
では、その自分の見立てはどこから来るのか。
会議室では出てきません。パソコンの前でも、たぶん出てきません。
現場で誰かの話を聞いていたとき。何かを見て、思わず心が動いたとき。うまくいかなくて悔しかったとき。好きなものに夢中になっていたとき。そういう、仕事とも呼べないような時間に溜まっていったものが、あとで「うちはこれが効くと思う」という一言になって出てきます。
私は、Official髭男dismの曲を聴いて考えたことをnoteに書いています。仕事とは関係ない話のようで、実はいちばん関係があると思っています。感じたことを言葉にする練習を、そこでしているので。
AIとうまく壁打ちできるかどうかは、壁打ちしていない時間に何を持ったかで決まる。 最近、そう思うようになりました。
プロンプトの練習より、先にできること
AIの使い方が上手くなりたい、という相談をいただくことがあります。
もちろん技術的なコツはあります。ただ、その前にできることの方が大きいと思っています。
自分の会社について、うまくまとまっていなくてもいいので、思っていることを持っておく。「たぶん、うちはこれなんじゃないか」という程度で構いません。それがあれば、AIも、ツールも、私のような外部の人間も、ちゃんと役に立ちます。
なければ、誰に頼んでも、どこかで見た会社になります。
そして、その「思っていること」は、きれいにまとまっている必要はありません。まとまっていないから、本人には材料に見えていないだけで、たいていの会社は、もう持っています。それを見つけて名前をつけるのが、私がふだんの仕事でいちばん楽しいと思っているところです。
事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。
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まずは一度、話してみませんか
「何から手をつければいいか分からない」の段階でかまいません。現状をうかがって、優先順位を整理するところからご一緒します。初回のご相談に費用はいただいていません。