入口をどこに置くかで、サイトの作りは変わる——強みは1つではありません

ブランディングの支援というと、「自社の強みを見つけて、言葉にしましょう」という話になることが多いと思います。実際、それが必要な会社はたくさんあります。何が強みなのか、社長ご自身も言葉にできていないケースは珍しくありません。

ただ今日お会いした事業者さんは、そこが課題ではありませんでした。

強みがあるのに、新しい人が増えない

ある教室のお話です。

先生の主張がはっきりしていて、ご自身のサービスの良さについて、何時間でも語れる。土壌はもう揃っています。それでも、新しく来る人がなかなか増えない。

こういうとき、足りないのは「何を言うか」ではありません。誰に向けて出すかのほうです。

いまのサイトを見ると、内容が、すでにこのスタイルをよく理解している人に向いていました。専門的で、深い。わかる人にはとても刺さる。けれども、初めてたどり着いた人には、少し遠い。

そうなったのには、理由があります

これは失敗ではありません。むしろ、これまでは正しかった。

この教室に来ていたのは、以前から通っている生徒さんと、その紹介で来る人がほとんどでした。つまり「このスタイルを十分に理解している人」です。その人たちに向けて発信するなら、少し高度な内容のほうが引きがいい。実際にそうだったので、サイトも自然とその方向に育っていきました。

サイトは、いま来ているお客さまに最適化されていきます。 反応がある内容を書き、反応がある言葉を残していけば、当然そうなります。

Search Console で検索キーワードを見ても、専門性の高い記事から入ってくる流入が多く出ていました。数字も、その方向を裏づけていたわけです。

問題は、そこから先です。増やしたい層が、いま来ている層と違うとき。サイトが向いている方向と、これから来てほしい人の方向が、ズレはじめます。

強みは1つではありません

ここで、強みの話に戻ります。

強みは考えなければいけません。それは変わらない。ただ、強みは1種類ではありません。初めての人に効く強みと、わかっている人に効く強みは、別物です。

まだ会ったことのない人にとって、強みになるのはこういう言葉です。誰でも参加できる。敷居が高くない。いつでも辞められる。どこにでも書いてあるような、ありふれた言葉に見えます。でも初めての人には、この「ありふれた安心」が、いちばん最初の一歩を支えます。

一方で、わかっている人にとって強みになるのは、専門性の高さです。専門用語で、そのまま語れる深さ。上級者にしか通じない言葉が、その人たちには「ここは本物だ」というサインになります。

どちらも本当の強みです。ただし、同じ場所には並びません。

「誰でも参加できます」と書けば、専門性は薄まって見えます。専門用語を並べれば、「誰でも」は嘘っぽく見えるか、怖くなります。片方に効く言葉が、もう片方には逆に働く。

ベテラン向けに偏っていたサイトは、後者の強みだけを出していた状態でした。前者の強みは、あるのに、出ていなかった。

間口を広げるとは、入口の位置を動かすこと

では、初めての人に届く言葉に変えていく。難しい表現をやめて、「現実的な悩みや生きづらさをなんとかしたい」と感じている普通の人に届く内容にする。

ここまでは、先日届いてほしい人は、3歩手前にいるで書いたことと同じです。届いてほしい人は、こちらが書いている場所より手前にいる。だから言葉を手前に置く。

今日書きたいのは、その続きです。手前に置くほど、その後が大変になります。

入口を手前に置くほど、後ろが大変になる

どの状態のお客さまを入口にするかで、サイトの作りは大きく変わります。そして、その後の仕事も変わります。

理解度が浅い層を、広く集める場合。 間口は広がるので、流入は増えます。ただ、成約までの打率は下がります。問い合わせや体験のあとに、理解を深めてもらう工程が必要になる。そのフォローの体制がないと、来てはくれたけれど続かない、ということが起きます。

すでに成約に近い層だけを集める場合。 問い合わせからの成約率は高くなります。その代わり、そもそもサイトへの流入が少ない。人が来ないので、サイトが活性化しません。どんな人が、何に困ってたどり着いているのか、ニーズも見えてきません。

入口を手前に置いた場合と奥に置いた場合の比較図。理解の深さを5段階の矢羽で表し、入口より右側の人だけがサイトに入ってくる。手前に置くと流入は多く成約率は低くフォローが大変、奥に置くと流入は少なく成約率は高くフォローは楽

どちらが正しい、という話ではありません。結局はバランスです。自社が受け止められる量と深さを見て、どこに軸を置くかを決める。 これが、入口の設計だと思っています。

今回の落としどころ

今回の教室では、入口を2つに分ける方向で話が進みました。初めての人向けの入口と、理解の深い人向けの本体とで、住み分ける形です。

分ける理由は、2つあります。

1つは、見せる強みが違うから。「誰でも」と専門用語は、同じページには並ばない。だから場所を分ける。

もう1つは、フォローの負荷が違うから。初めての人は、来たあとに理解を深める工程が要る。わかっている人は、来た時点でほぼ決まっている。この2つを同じ導線に乗せると、どちらにも合わない対応になります。

先日の記事で「ターゲットごとにページを分ける」と書いたのと、同じ結論です。ただ、たどり着いた理由が違います。前回は「言葉が届かないから」。今回は「見せる強みと、その後の負荷が違うから」。

ひとつ、話していて面白かった視点があります。理解の深い常連さんが核にいる場所では、初めて来た人が、その人たちを見て育っていく。フォロー体制の一部を、既存のお客さまが担っているということです。これは、最初から設計してできるものではありませんが、あるなら大きな資産です。

これは、顧客管理の話でもあります

入口を広げるなら、来た人を「どの理解度で来たか」で見分けて、それぞれに次の一歩を用意する必要があります。初めての人には、初めての人の次の一歩。わかっている人には、その人の次の一歩。

これは、顧客管理そのものです。

サイトのリニューアルを考えるとき、フォローの設計を同時に考えないと、片方だけが立派になります。入口はきれいになったけれど、入ってきた人の行き先がない。そういうことは、本当によく起きます。

ポイント

  • サイトは、いま来ているお客さまに最適化されていきます。 反応のある内容を残していけば、自然とそうなります。増やしたい層と、いま向いている方向がズレていないか、一度見てみてください
  • 強みは1つではありません。 初めての人に効く強みと、わかっている人に効く強みは別物で、同じ場所には並びません。片方に効く言葉が、もう片方には逆に働きます
  • 入口を手前に置くほど、流入は増え、成約率は下がり、フォローが要ります。 逆に絞れば、成約率は上がり、流入は減り、ニーズが見えなくなります
  • 入口の位置は、自社が受け止められる体制で決めます。 正解はなく、バランスです。見せる強みと、その後の負荷が違うなら、入口を分けるのも手です
  • サイトとフォローは、セットで設計します。 入口だけ立派になって、入ってきた人の行き先がない、ということがよく起きます

サイトに何を書けばいいか決まらない、というご相談はサイトを更新したいが中身が決まらないに、紹介以外の新しい接点を作りたいという話は1社依存から抜け出したいのページにも書いています。


事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。

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