こんなときに

大口の取引先に依存していて、新規開拓を始めたい

切られたら会社が終わる、という自覚はある。でも新規開拓なんてやったことがない。何から手をつけていいか分からない。

よくある状況

長年、決まった取引先からの仕事でやってきた会社です。製造業に多いのですが、それ以外でもよくあります。品質にも納期にも応えてきて、だからこそ関係が深くなり、気づいたら売上の大半がその1社になっていた。あるいは、公共系の取引と、商工団体や相談窓口からの紹介だけで回ってきた。

危機感はあります。相手の都合ひとつで来期の売上がなくなる。それは分かっている。それでも動けない理由が、だいたい三つあります。

ひとつは、「営業」と聞いて思い浮かぶのが飛び込みやテレアポで、うちには無理だと感じていること。ふたつめは、営業担当がいないこと。社長が動くしかないけれど、社長は現場も見ています。

そして三つめが、いちばん大きい。自社は何を売りにすればいいのか、分からない。 言われた通りに作ってきたので、選ばれる理由を自分の言葉にしたことがないのです。

先に、正直に書いておきます

新規開拓は時間がかかります。半年で取引先が増えます、という話はできません。

ただ、1社依存は、問題が起きてから動いたのでは間に合いません。仕事があるうちに始めるしかない種類の課題です。逆に言えば、今動ける状態にあるなら、条件としては悪くありません。

もうひとつ。この状況で最初に「ホームページを作り直そう」となることが多いのですが、お金をかけるべき順番は、たいていそこではありません。 理由は下に書きます。

手をつける順番

1. 何ができる会社なのかを、言葉にする

ここが最初です。飛ばして営業に出ると、価格の話しかできなくなります。

やることは単純で、今の取引先がなぜ自社に頼み続けているのかを聞くことです。「安いから」ではない理由が、必ずあります。無理な納期に応えてきた。図面が曖昧でも読み取ってきた。試作を何度も付き合ってきた。本人たちは当たり前だと思っているので、外から聞かないと出てきません。

自分たちの当たり前が、外から見ると選ばれる理由だった、という例は本当によくあります。「うちはただの紙袋屋です」と言っていた会社の話も、まさにそれでした。

2. すでに持っている名刺を、全部出す

知らない会社を探しに行く前に、やることがあります。もう持っているつながりを、一度すべて並べることです。

組合の会合、展示会、業界の集まり、紹介。長くやってきた会社ほど、名刺は溜まっています。名刺アプリに入れっぱなし、箱に入ったまま、という状態がほとんどです。

これを一件ずつ見ながら、「ここはどういうつながりですか」と確認していきます。すると、たいてい同じことが分かります。盆暮れの挨拶はしているけれど、自社が何をしている会社なのかを、まともに説明したことがない。

つまり、名刺は持っているのに、相手はこちらに何を頼めるのかを知らない。ここは、ゼロから新規開拓するより圧倒的に早く動きます。

3. 誰に声をかけるかを決める

いきなり新しい市場に行きません。今の仕事と地続きのところを選びます。

同じ材料を扱う業界。同じ設備が要る仕事。今の取引先と似た困り方をしている会社。ここなら実績がそのまま説明になります。まったく違う分野に行くと、一から信用を作ることになって、時間もお金も倍かかります。

そのうえで、最初は30社くらいにしぼります。少なく感じるかもしれませんが、30社にきちんと接触すると必ず何かが分かります。数百社のリストは、結局どこにも連絡しないまま終わります。

4. 売りに行かず、聞きに行く

いきなり提案しません。「同じような仕事をされていると伺ったので、どういう作り方をされているのか聞かせてください」でいい。

遠回りに見えて、これがいちばん早い道です。相手が何に困っているかを聞かないと、こちらの何が刺さるのか分からないからです。それに、この入り方なら断られてもダメージがありません。営業の経験がない会社が続けられる形にすることが、この段階では最優先です。

5. 反応を記録する

何を言ったら、どう返ってきたか。断られた理由。反応が良かった言い回し。これを残します。

3か月分たまると、自社の説明の仕方が変わります。 ここが新規開拓の最初の収穫で、取引先が増えるより先に手に入るものです。

6. 続けている活動を、一度検証する

毎年出ている展示会、続けている広告、定期的な巡回。「ずっとやっているから」という理由だけで続いているものがあれば、一度止めて見直します。

出展したあとに追いかけていない展示会は、成果が出ないのが当たり前です。やめるかどうかを決める前に、追いかけてみてから判断するのが順番です。

7. 今の取引先との関係も、あらためて見直す

1社依存を減らすことは、その1社を軽んじることではありません。むしろ逆で、自社の価値がはっきりすると、今の取引先との話し方も変わります。価格の話になったときに、言えることが増えます。

ツールとホームページの位置づけ

最初はエクセルで十分です。30社の記録に、システムは要りません。CRMを検討するのは、接触先が増えて記録を追えなくなってからで間に合います。

ホームページも同じです。サイトに何を書くかが決まっていない段階で作り直しても、「言われたものは何でも作ります」と書いてあるサイトができるだけです。 提供価値が言葉になってから作った方が、同じ費用でまったく違うものになります。順番を逆にしないことが、いちばんの費用対策だと思っています。

費用のこと

この状況にある会社は、新規開拓にかけられる予算が限られていることが多いと思います。それは前提としてお話しします。

上に書いた手順のうち、最初の三つはお金がほとんどかかりません。もう持っている名刺と、もう知っている取引先の話から始まるからです。かける順番を間違えなければ、少ない予算でも動かせます。

また、東京都内の企業であれば、公的機関の専門家派遣制度を使える場合があります。私自身、公益財団法人 東京都中小企業振興公社の専門家として、都内企業のご支援を担当しています。使える制度があるかどうかも含めて、最初のご相談でお伝えします。

近い実績

大田区の町工場で、新規開拓のご支援をしています。二代目の社長さんの会社です。

大量生産ではなく、要望を個別に伺って試作を何度も重ね、本発注につなげることを得意とする会社でした。ただ、仕事の入口は公共系の取引と、区の相談窓口などからの紹介にほぼ限られていて、自分から取りに行く文化がありませんでした。その紹介が減り、主要な取引先からの発注も少しずつ落ちてきた、という状態でのご相談です。

最初のご依頼は「ウェブサイトを作り直して新規顧客を開拓したい」でした。ただ、伺っていくと、サイトに何を書くかという以前に、自社の提供価値が決まっていませんでした。「言われたものは何でも作ります」という説明しかできない状態です。

営業活動も同じでした。展示会には毎年出展していましたが、その後のフォローは一度もしていません。1件も受注できなかった年があっても、「ずっと続けているから」という理由で出展が続いていました。

そこで、サイトの改修より先に、営業行動の棚卸しから着手しました。そのなかで出てきたのが、社長が組合の会合などで長年もらってきた名刺です。名刺アプリにきちんと溜めておられました。ITは得意ではないとおっしゃっていましたが、記録は残っていたのです。

それを一件ずつ見ながら、どういうつながりなのかを伺っていきました。分かったのは、盆暮れの挨拶はしているけれど、自社が何をしている会社なのかを説明したことがない、という状態でした。

まずはここを整理することから始めました。ホームページの改修も別のプロジェクトとして動いてはいましたが、先に名刺を活かす方が効果が高いと判断したためです。

実際に声をかけ始めると、案件化する例がぽつぽつ出てきました。ただ、それ以上に大きかったと感じているのは、次の二つです。

  • 認識ゼロの状態から、具体的な営業活動が始まったこと
  • 「集まりで会う知り合い」だった相手を、「お客さまとしてどうお付き合いしていくか」という視点で見られるようになったこと

ご支援が終わったあとの売上まで追えているわけではありません。確実に申し上げられるのは、ここまでです。

ほかの場面

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「何から手をつければいいか分からない」の段階でかまいません。現状をうかがって、優先順位を整理するところからご一緒します。初回のご相談に費用はいただいていません。

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