社員が作ったAIの使い方を、社内で共有する方法
先日、ご支援先でこう聞かれました。
「うちの社員が、AIで売上の分析みたいなものを作ったんです。よくできているので他の社員にも使わせたいんですが、あれってどうやって渡すんですか」
とても良い質問だと思いました。今日は、この答えを具体的に書きます。
成果物を配るだけなら、Googleドライブで十分です
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
できあがったレポートやファイルを配るだけなら、AIの話ではありません。 Googleドライブなり SharePoint なり、いつも使っている場所に置いて共有すれば済みます。わざわざAIのプランを変える必要はないですし、そのほうが後から探しやすい。
なので「共有できないんです」という相談を聞くと、私はまず聞き返します。渡したいのは、そのファイルですか。それとも、そのファイルが作れる状態のほうですか。
たいてい、後者です。先月の売上分析が欲しいのではなく、毎月それが出せるようになってほしい。 そういう話であることがほとんどです。
共有したいのは、結果ではなく「やり取り」のほう
Aさんがその分析を作るまでには、こういうものがあったはずです。どのデータを渡したか。どんな聞き方をしたか。一回目の答えのどこが違っていて、どう直させたか。「この商品分類は無視して」といった、Aさんの頭の中にしかない注釈。

この一式が、実は成果物より価値があります。 そして、これはドライブでは渡せません。Aさんのアカウントの中の、会話の履歴に埋まっているからです。
ここを渡す手段は、大きく3つあります。
| 考え方 | やること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Aさんのやり取りを、そのまま渡す | 会話の共有リンク、プロジェクトの共有、道具にして配る | すでに誰かが良いやり方を見つけている。まずはここから |
| 最初から、みんなに見える場所でやり取りする | Slackのチャンネルの中でAIを呼び出す | 日常の連絡がSlackやTeamsに集まっている会社 |
| 会社の資料のほうを、AIに読ませる | 社内データへの接続、共有ノートブック | ドライブやSlackに、すでに資料が溜まっている会社 |
順に見ていきます。
方法①:Aさんのやり取りを、そのまま渡す
いちばん手前の方法です。軽い順に3段階あります。
会話の共有リンク。 どちらにも、その会話を見せるリンクを作る機能があります。「こう聞いたらこう出たよ」を見せるだけなら、これがいちばん速い。ただし相手は続きから使えないので、参考資料どまりです。
プロジェクトごと共有する。 資料と指示をまとめておける「プロジェクト」を、そのまま人に渡せます。ここからが本番です。
- ChatGPT Business — プロジェクトをメール、グループ、リンクで招待して共有できます。権限は2段階で、「編集」は指示やファイルを変えられて他の人も招待できる、「チャット」は使えるけれど招待はできない、という分かれ方です
- Claude Team — プロジェクトを作るときに、自分だけのものにするか組織全体に見せるかを選べます。個別の共有は「閲覧のみ」と「編集可」の2段階。共有されたものは相手の画面の一覧に出てきます
Bさんはその作業場に入って、Aさんが入れた資料と指示を引き継いだ状態で、自分の続きを始められます。「やり取りを渡す」にいちばん近いのが、これです。
道具の形にして配る。 もう一段進めると、使い方そのものを部品にして配れます。ChatGPT なら自作の GPT を、リンクを知っている人・ワークスペース全体・招待した人だけ、から範囲を選んで共有できます。Claude には「スキル」という、作業手順そのものを書いて持たせる仕組みがあり、同僚に直接渡すことも、社内のディレクトリに公開して誰でも入れられるようにすることもできます。受け取った側は中身を編集できない代わりに、作った人が直すと全員に自動で反映されます。
ひとつ注意を。Claude が作った成果物(アーティファクト)は、個人プランだとボタンが「公開」で、リンクを知っていれば社外の誰でも見られます。Team と Enterprise では「共有」に変わり、自社アカウントでログインしている人にしか見えません。社内の数字を扱うなら、地味ですが大きい違いです。
方法②:最初から、みんなに見える場所でやり取りする
ここからが、あまり知られていない方法です。
Aさんのやり取りを後から渡すのが面倒なら、最初から全員が見える場所でやればいい、という発想があります。
Claude には Slack のチャンネルの中で @Claude と呼び出す使い方があり(Team・Enterprise プランで提供)、その一連のやり取りがチャンネルの全員に見えたまま進みます。 誰でも途中から口を出せますし、続きを引き継ぐこともできます。チャンネルの履歴や、管理者がつないだ社内ツールも見に行きます。
これは共有の考え方として、かなり違います。共有する作業が要らない。最初から共有されている。
小さな会社ほど効くと思っています。「共有しておいてね」という約束は、たいてい守られません。でも「そこでやれば、勝手に残る」なら、守るも守らないもありません。
方法③:会社の資料のほうを、AIに読ませる
もうひとつ、逆向きの発想があります。
AIの中に資料を入れて共有するのではなく、すでに資料が置いてある場所を、AIに読みに行かせるという方法です。
ChatGPT の「company knowledge」(Business・Enterprise・Edu)は、Google ドライブや Slack など、つないだアプリを横断して社内の情報を探して答えます。大事なのは、その人がもともと見る権限を持っているものしか見えないところです。
**Gemini Notebook(旧 NotebookLM)**は、資料を集めたノートブックを作ってチームで共有できます。共有相手は「閲覧者」と「編集者」に分けられます。
冒頭のドライブの話と、ここでつながります。成果物をドライブに置くのは正解です。ただし、AIから読める場所に置いてあるか。 そこまで考えると、ドライブは「保管場所」から「会社の記憶」に変わります。
何人から始められるか
2026年8月時点の公式ページでは、ChatGPT Business も Claude Team も、年払いで1人あたり月20ドル(月払いなら25ドル)。Gemini Notebook は Google Workspace の全プランに含まれています。
そしてどちらも2人から始められます。 全社導入を決めてから、ではありません。実際にいちばん使っている2人からで構いません。
(為替も改定もありますので、金額は必ず公式ページでご確認ください)
どれから始めるか
社員が10人くらいの会社で相談を受けたら、私はこの順で考えます。
1. まず、いま一番うまく使っている人のプロジェクトを1つ共有する。 全社の仕組みを設計する前に、これです。うまくいくかどうかが2週間でわかります。
2. 日常の連絡が Slack や Teams に集まっているなら、そこで呼び出せるようにする。 共有し忘れが構造的に起きなくなるので、いちばん効きます。
3. ドライブに資料が溜まっているなら、読みに行かせる設定をする。 資料を作り直す必要はありません。
4. 全員に配る「道具」を作るのは、最後。 誰の何が役に立つかが分かってからで十分です。
逆の順でやると、たいてい止まります。先に立派な仕組みを作って、誰も使わない。 これは顧客管理ツールでも、まったく同じことが起きます。
配っただけでは、使われません
最後にひとつだけ。ここまで手段の話をしてきましたが、共有ボタンを押せば使われる、という話ではありません。
Aさんが作った良い道具を、ちゃんと共有した。なのにBさんが使わない。私はこの光景を、AIとは関係のないところで何度も見てきました。顧客管理ツールを入れたのに定着しない、というときとまったく同じことが起きています。なぜそうなるのかは長くなるので、次回に書きます。
まずは、いちばん使っている人のプロジェクトを1つ、隣の席に渡してみてください。そこから先の話は、渡してみないと始まりません。
この記事は、各サービスの公式ヘルプで2026年8月20日時点の仕様を確認して書いています。手順の整理にはAIを使い、現場で見てきたことを私が足しました。
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