「どこを切っても同じ顔」が、AIに選ばれる理由になる——小さなお店が、AI時代に整えておきたいこと
最近、ある小さなスタジオのサイトについてご相談を受けました。
心と体を整えることを大切にしているスタジオで、長く、リピーターの方を中心に続けてきた場所です。独自の世界観があって、それを好きで通い続けている人たちがいる。一方で、これからは新しい方にも来てほしい。その世界観を崩さずに、初めての人にどう届けるか。
こうしたご相談は、小さなお店や教室からよくいただきます。そして最近は、この問いに答えるときに、AIの存在を抜きにしては考えられなくなってきたと感じています。
先に、私がいま大事だと考えていることを並べておきます。
- 来てほしい人だけでなく、対象にしない人も決める
- AIには、単語ではなく本音で相談される。集客の前提が変わりつつある
- 発信に一貫性がないと、人は「怪しい」と感じる。どこを切っても同じ顔でいること
- 少額のリスティング広告は、調査として使える
- サイトは、スマホで縦に読み進める前提で作る
ひとつずつ書いていきます。
AIには、単語ではなく本音で相談される
これまでの検索では、私たちは単語を打ちます。「業種名 地域名」「〇〇 おすすめ」のように、短く、少し他人行儀に。
ところが、ChatGPT のような生成AIに向かうときは違います。「最近ずっとイライラしていて、気持ちを落ち着けたい」「肩こりがひどいけど、激しい運動は苦手」。検索窓には打たないような本音を、そのまま相談するんです。
| これまでの検索 | 生成AIへの相談 | |
|---|---|---|
| 入力するもの | 単語(業種名+地域名など) | 状況や気持ち(「最近イライラする」) |
| 返ってくるもの | ページの一覧 | その人に合わせた提案 |
| 役割 | 調べる道具 | 話し相手 |
AIはサイトの中身を読み込んだうえで、その人の状況に合わせて「こういう場所がありますよ」と提案します。生成AIは、調べる道具というより、話し相手になりつつあるのだと思います。
こうした、AIの回答の中で選ばれるための工夫は、「AIO対策」や「GEO対策」と呼ばれています。言葉は新しく、難しそうに聞こえます。でも私は、中身は意外と地に足のついたものだと考えています。
AI経由の人は、決めてから来る——指名検索が増える理由
AI経由でサイトに来た人のほうが、問い合わせや申し込みにつながりやすい、と言われています。
考えてみると、自然なことです。AIとのやりとりの中で、自分の悩みを話し、提案を受け、ある程度納得してから来ている。比べている途中ではなく、ほぼ決めてから来ているんです。
もう一つ、私が注目しているのは、AIの回答を見たあとで、その店名を改めて検索する動きです。いわゆる「指名検索」です。AIに勧められた場所を、自分の目で確かめに行く。
ここで、次の話につながります。
どこを切っても同じ顔でいる
確かめに来た人が見るのは、サイトだけではありません。SNSも見ますし、口コミも見ます。もう一度AIに聞き直すこともあるでしょう。
そのとき、発信内容に一貫性がないと、見る人は「怪しい」と感じます。
AIでは穏やかで丁寧な場所として紹介されていたのに、サイトに来たら売り込みの強い言葉が並んでいる。SNSでは、また別の雰囲気。そうなると、人は「どれが本当なんだろう」と身構えます。せっかく決めて来てくれた人が、最後の最後で引き返してしまう。
だから、サイトでも、SNSでも、AIの回答でも、どこを切っても同じ顔になっていること。私は、これがAI時代の集客でいちばん大事なことだと考えています。
そして、同じ顔でいるためには、その顔が何なのかを先に決めておく必要があります。ここからは、その準備の話です。

同じ顔をつくる①:来てほしくない人を決める
ターゲットを考えるとき、私たちはつい「誰に来てほしいか」だけを考えます。私はご相談の中で、「誰を対象にしないか」でも決めましょうとお伝えしています。
少し冷たく聞こえるかもしれません。でも、全員に好かれようとすると、言葉はどんどん丸くなって、顔がぼやけます。「どんな方でも歓迎です」と書いたサイトは、実は誰にも刺さらない。対象にしない人を決めると、残った人に向ける言葉がはっきりします。
もう一つ、現実的な話もあります。初めての人が入口にする検索は、「業種名+地域名」がほとんどです。「心を整える」のような抽象的なことばで集客するのは難しい。
大切にしている世界観は、抽象的なことばで語りたくなるものです。でも、入口はあくまで具体的な言葉で開けておく。そのうえで、中に入った人に世界観をしっかり伝える。入口と中身で、役割を分けて考えるということです。
入口の置き方については、以前「入口をどこに置くかで、サイトの作りは変わる」という記事でも書きました。
同じ顔をつくる②:自分たちの言葉で原稿を整える
では、AIに自分たちのことを正しく読み取ってもらうには、どうすればいいのか。
一つの方法として、サイトの原稿を構造的に整理しておくやり方があります。見出しと中身がはっきり分かれた形(マークダウン形式)で内容をまとめ、それをページの裏側、たとえばメタタグなどに反映しておく。訪れた人の目に触れる見た目の部分に、そのまま出す必要はありません。
具体的なやり方は、サイトの作りによっても変わります。ただ、私がいちばん大事だと思っているのは、技術よりもその手前です。整理する原稿が、自分たちの言葉で書かれているかどうか。
私はこれを、「媚びないけど、守っていく」と表現しています。検索されやすい言葉に寄せすぎて、自分たちらしさを手放すのではない。かといって、分かる人にだけ分かればいいと閉じるのでもない。自分たちの感覚に近い言葉で、でも初めての人にも伝わるように表現する。
AIは、サイトに書かれていることをもとに、相談してきた人に合わせて紹介します。借り物の言葉で書かれていれば、借り物の顔で紹介される。自分たちの言葉で書かれていれば、その顔で紹介される。そう考えると、原稿を整えることは、AIのためというより、自分たちの顔を決める作業なのだと思います。
同じ顔を確かめる:少額の広告は「調査」に使う
整えた顔が、本当に届いているのか。それを確かめる方法として、私は少額のリスティング広告をおすすめしています。
広告というと「お金をかけて人を集めるもの」と考えがちです。でもここでは、調査として使うという視点です。どんなキーワードで来た人が、サイトの中でどう動くのか。どのページを読み、どこで離れるのか。それが分かります。
月3万円程度からでも意味があります。ただし、傾向が見えてくるまでには半年ほどかかります。すぐに結果を求めるのではなく、自分たちの言葉が誰に届いているのかを知るための、小さな観測所のようなものです。
器は、スマホで縦に読み進める前提で
最後は、サイトの器の話です。
Google は、スマホで見たときのページをもとにサイトを評価しています(モバイルファーストインデックス)。実際に、初めての人の多くはスマホで見に来ます。
だから、パソコンの画面で見栄えのいいレイアウトを考えるのではなく、スマホで縦に読み進めていく流れを前提に構成を考える。上から順に読んでいったときに、世界観が伝わり、知りたいことが分かり、次の一歩が見える。そういう並びにしておくことが大切です。
世界観を守ることと、新しい人に届けることは矛盾しない
冒頭のスタジオのご相談に戻ります。
このスタジオでは、「何を伝えるか」というブランドの方向性を、先にしっかり固めていました。だからこそ、「どう見つけてもらうか」という話を、迷わず具体的に進められた。順番が大事だと、改めて感じました。何を伝えるかが決まっていないうちに見つけてもらう方法を考えても、話は空回りしてしまいます。
そして、AI経由の人は決めてから来るという話と、「どこを切っても同じ顔」という話は、一本の線でつながっています。世界観を守りながら新しい人に届けたい、という課題への答えは、そこにありました。世界観を守ることと、新しい人に届けることは、矛盾しない。むしろ、世界観がはっきりしているほど、AIにも人にも、同じ顔で伝わりやすくなる。
これは、小さな事業者ほど大事なことだと思います。大きな会社のように、広告費をかけて露出を増やすことはできません。でも、自分たちらしい言葉を整理しておくことなら、今日からでもできます。それが、AI時代の集客の土台になると私は考えています。
自分たちらしい言葉は、きれいごとからではなく、本音から出てきます。私が「本音から始める」ことを大事にしているのも、同じ理由です。
ポイント
- 来てほしい人と同じくらい、対象にしない人を決める。 顔がはっきりし、言葉が届きやすくなります
- 入口は具体的な言葉で開けておく。 初めての人の検索は「業種名+地域名」が中心です
- AIには、単語ではなく本音で相談される。 AIはサイトを読み込み、その人に合わせて提案します
- AI経由の人は、決めてから来る。 AIの回答を見たあと、店名で確かめに来る人もいます
- どこを切っても同じ顔でいる。 一貫性がないと、人は「怪しい」と感じます
- 原稿は、自分たちの言葉で整える。 媚びないけど、守っていく
- 少額の広告は調査に使える。 月3万円程度から、傾向が見えるまで半年ほど
- サイトはスマホで縦に読む前提で。
事例は、事業者さんが特定されないよう一部の情報をぼかしています。
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