顧客管理ツールが浸透しない理由──“理念とのズレ”が現場を止める

2025/05/23 7:05 - By 中山幸子

はじめに:顧客管理ツールが「使われない」理由とは

顧客管理ツール(CRM)を導入したのに、社内で活用されない――。
そんな経営者の声を、私はこれまで何度も聞いてきました。

多くの会社が「操作方法」や「機能面」にばかり注目してしまい、
そもそもなぜ顧客情報を管理するのか?という“目的”が現場に伝わっていないのです。

使い方ではなく、「何のために使うのか」。
その本質が浸透していなければ、いくら高機能なツールを入れても意味がありません。

実は、顧客管理は“理念”を社内に浸透させるための「仕組み」にもなり得るのです。


実は「顧客管理」は理念浸透のツールでもある

CRM(顧客関係管理)は単なる情報のストック場所ではありません。

それは、「どんなお客様と、どんな関係性を築いていくか」を記録し、
育てていくためのツールです。

つまり、会社が大切にしている価値観や“あり方”が、
そのまま顧客管理の中ににじみ出てくるものなんです。

逆に言えば、CRMがうまく活用されていない会社は、
「どんなお客様を大切にするのか」という軸がぶれていることも少なくありません。

理念とツールを“つなぐ”3つの視点

1. そもそも誰のために顧客管理をするのか?

お客様のため?経営者のため?上司のため?
それとも「現場が楽になるため」?

CRMは単なる“監視”の道具ではありません。
「あなたのこと、ちゃんと覚えていますよ」と伝えるための“おもてなしの道具”なんです。

2. 理念が現れるKPI設計をしているか?

たとえば、「数字(売上)」だけではなく、
「感謝の言葉が記録された件数」「紹介に至った理由」など、
理念に根ざした指標がKPIとして入っているかを見直してみてください。

3. 社員が“腹落ち”できる対話や共有の場があるか?

ツールを導入する前に、なぜやるのか、何を大切にしたいのか。
その対話が抜けたまま進むと、ツールは“やらされ感”の象徴になります。

「これは管理ではなく、“つながりを可視化するツール”なんだ」
という認識が、現場に広がっているかどうかがカギです。

よくある失敗例:仕組みだけで回そうとして崩れる

ある会社では、営業社員の離職率が高く、
「せめて顧客情報だけは残したい」とCRM導入を急ぎました。

しかし、操作マニュアルを配っても誰も使わない。
報告内容も「定型入力」だけで、会話の温度や背景がわからない。

なぜ失敗したのか――
それは、CRMを「防衛策」や「管理強化」としてだけ見ていたからです。

現場は感じ取っています。
「このツールは、誰のためのものなのか?」と。


スマートプラスで実際に行うのアプローチ

私たちは、CRMの前にまず「理念」の共有から入ります。

たとえば、ある福祉事業者では、
「人生を支える伴走者でありたい」という理念がありました。

そこで、CRMには「どんな背景で相談が来たか」や、
「その人らしさを引き出すための会話メモ」などを記録する項目を設計。

これは単なる“履歴”ではなく、
「相手を尊重し続けるための仕組み」だったのです。

このCRMを通じて、社員の言葉も変わりました。
「データ入力」ではなく、「あの人との関係性を大切にする作業」だと。


まとめ:「仕組みだけではなく、想いとセットで設計する」

CRMや顧客管理は、ツールでありながら、
会社の「あり方」を表す“鏡”でもあります。

仕組みと想いをつなぐことで、
顧客だけでなく、社員同士の信頼も育ちます。

「理念を“言葉”だけでなく、“仕組み”に落とし込む」
その視点が、経営と現場を一つにつなぐ鍵になるのです。


スマートプラス株式会社では、理念浸透・業務最適化・CRM活用支援などを通じて、
“本音が動力になる組織”を共に築いています。


経済産業省推奨資格「ITコーディネータ」保有者が、
現場に寄り添いながら実行可能な支援を行います。

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中山幸子