RFPの書き方とサンプル——顧客管理ツールの乗り換えで、必須条件を絞った提案依頼書の一例

RFP(提案依頼書)に書く項目は、だいたい次の10です。順番もこのとおりで構いません。

項目 書くこと 分量の目安
1. 自社の概要 業種・規模・拠点・この話に関わる部門 5〜10行
2. 背景と目的 なぜいま入れ替えるのか、何を変えたいのか 10行前後
3. 現状の業務の流れ 誰が、何を受けて、何をして、誰に渡すか 1〜2ページ(図があれば図)
4. 困っていること 現場の言葉で、具体的に 5〜10個
5. 実現したいこと ツールを入れたあとの姿。実現方法は書かない 5〜10個
6. 条件(必須と任意) 満たさなければ対象外になるものと、あればうれしいものを分けて 必須は数個まで
7. 規模とデータ 利用人数・顧客数・移行するデータの量と形 表で1つ
8. 予算感とスケジュール 書けるなら書く。希望の稼働時期 数行
9. 提案してほしいことと評価の観点 提案書に入れてほしいもの、何を重く見るか 箇条書き
10. 進め方 提出先・期限・質問の窓口・その後の予定 数行

この記事の末尾に、この10項目を埋めたWordのひな形を置いています。架空の会社が、顧客管理ツール(CRM)をExcelと安価なクラウドツールから本格的なツールに乗り換える、という設定です。

ただ、先に一つだけ断っておきます。

以前、RFPとRFIの違いの記事で、「欄を埋めれば完成するような書式を一律にお見せするのは避けたい」と書きました。その考えは変わっていません。何を必須条件に置くか、何を聞くかは、会社の状況とプロジェクトの趣旨でまったく変わるからです。

それでもひな形を付けることにしたのは、「このくらいの粒度でいい」を見てもらうには、実物に近いものをお見せするのがいちばん早いと思ったからです。これはあくまで一例です。欄を埋めるためではなく、「ここまででいいんだ」と「ここは書きすぎだ」の感覚をつかむために使ってください。

そして、ひな形より大事な話を、この記事の真ん中に書きます。提案が集まらないRFP、金額が跳ね上がるRFPには、共通点があります。必須条件が多すぎることです。

サンプルの会社は、こういう設定です

架空の会社ですが、このくらいの規模の会社から、RFPを書く必要が出てきます。もっと小さいと、RFPを書くまでもなくツールを決めてしまいます。もっと大きいと、情報システム部門があって、この記事の読者とは少し違う話になります。

  • 製造業(産業用機器の部品)。従業員約80名、うち営業が15名。本社と工場が1か所ずつ、営業所が2か所
  • 顧客情報は、営業がそれぞれExcelと名刺で管理。数年前に入れた安価なクラウドの顧客管理ツールは、使う人と使わない人がいて、事実上止まっている
  • 見積もりと受注は販売管理システム。顧客管理ツールとはつながっていない
  • きっかけは、ベテラン営業の退職で引き継ぎがうまくいかず、取引が減ったこと。社長が「顧客の情報を会社のものにする」と決めた

新規導入ではなく、Excelと安価なツールから、本格的なツールへの乗り換えという設定にしました。実際にご相談を受けるのは、この形がいちばん多いからです。何もないところに入れるのではなく、すでにデータがあちこちにあって、一度失敗している。その前提で書くRFPです。

では、項目ごとに見ていきます。ひな形の本文をそのまま引用し、そのあとに「なぜこう書くか」を添えます。

1、2. 自社の概要と、背景・目的——「なぜいま」を数行で

当社は産業用機器の部品を製造・販売しています(従業員約80名、営業15名、本社・工場・営業所2か所)。取引先は約600社で、うち継続的に取引があるのは約200社です。

顧客とのやりとりは、営業がそれぞれExcelと名刺で管理してきました。数年前にクラウドの顧客管理ツールを導入しましたが、入力が定着せず、現在は一部の営業が使っているのみです。

今回の目的は、顧客とのやりとりの記録を会社として持ち、担当が変わっても取引が続く状態を作ることです。昨年、ベテラン営業の退職にともない複数の取引先との取引が減り、その影響を強く感じています。

ここは、このくらいでいいです。ベンダーさんが知りたいのは、「うちの得意な領域か」と「この会社は本気か」の二点です。

「なぜいま」を書くことは、思っている以上に効きます。退職で取引が減った、という一文があるだけで、ベンダーさんの提案は「引き継ぎ」に焦点が合います。機能一覧をいくら並べても、この焦点は伝わりません。

「一度ツールを入れて定着しなかった」も、隠さずに書いてください。恥ずかしいと思われる方が多いのですが、ベンダーさんから見ればよくある話です。むしろ、「前回はなぜ定着しなかったと考えているか」まで書いてあると、提案の質が上がります。

3、4. 現状の業務の流れと、困っていること——ここがRFPの本体です

【現状の流れ(新規の引き合いから受注まで)】

  1. 展示会・紹介・サイトからの問い合わせを、営業担当が個別に受ける(名刺・メール)
  2. 訪問・打ち合わせの記録は、担当が自分のExcelと手帳に残す
  3. 見積依頼が来たら、販売管理システムに顧客を登録して見積を作る(ここで初めて会社のシステムに顧客が入る)
  4. 受注後は販売管理システムで処理。その後のフォローは担当任せ
  5. 月次の営業会議で、各担当が口頭とExcelで案件を報告する

【困っていること】

  • 担当が不在・退職すると、その顧客との経緯が誰にも分からない
  • 同じ会社に複数の営業が別々にアプローチしていたことが、あとから分かる
  • 見積までいかなかった引き合いは、どこにも記録が残らない
  • 営業会議の資料作りに、各担当が月に半日かけている
  • 販売管理システムとExcelで、同じ会社が違う名前で登録されている

RFPの本体は、この二つです。 ベンダーさんは、現状の流れと困りごとを読んで、自社のツールでどう変えられるかを提案します。ここが薄いと、どの会社からも似たような、機能の説明書のような提案が返ってきます。

ここを書くために、業務の棚卸しが要ります。そのやり方は業務棚卸のやり方とフォーマットに書きました。棚卸しの表があれば、この項目はそこから抜き出すだけで書けます。逆に、棚卸しなしでここを書こうとすると、書く人の頭の中にある業務だけが書かれて、あとで「そんな業務もあった」が次々に出てきます。

分量の目安としては、流れが1〜2ページ、困りごとが5〜10個。ひな形はその分量で作っています。実際の案件では、部門がいくつも関わるとここが何十ページにもなります。それはそれで構いません。ただし、流れと困りごとが増えるのはいいのですが、次の「条件」が一緒に増えていくのは止めてください。

5. 実現したいこと——姿を書く。やり方は書かない

  • どの顧客とも、最初の問い合わせから受注後までのやりとりが、一か所で時系列に見られる
  • 担当が変わっても、次の担当がその顧客の経緯を読んで訪問できる
  • 営業会議の資料を、各担当が作らなくてよい状態にする
  • 同じ会社が、表記の違いで二重に登録されない
  • 営業が外出先から短時間で記録を残せる

「スマホアプリがあること」ではなく「外出先から短時間で記録を残せる」。「名寄せ機能があること」ではなく「同じ会社が二重にならない」。こう書くと、ベンダーさんごとにやり方の違う提案が返ってきて、その違いがそのまま比較の材料になります。

やり方まで書いてしまうと、ベンダーさんはそのやり方を再現することに力を使います。そして、それがそのツールの苦手なやり方だった場合、カスタマイズの見積もりが貼られて返ってきます。

6. 条件——必須を数えてください。ここがいちばんのポイントです

【必須条件】満たさない場合は、今回の選定の対象外とします

  1. 月次の営業会議で見ている項目が、そのまま出力できること。具体的には、進行中の案件の一覧を、案件ごとの段階(初回訪問・提案中・見積提出済みなど)と、最後に動きがあった日が分かる形で見られること(別紙に現在の報告書の項目を添付します)
  2. クラウドであること(自社でサーバーを持たない)
  3. スマートフォンから、訪問記録の入力と顧客情報の参照ができること

【任意条件】あれば評価しますが、なくても対象外にはしません

  • 案件ごとに見積金額と受注の見込みを入れて、月ごとの見込みを集計できる
  • 名刺を撮影して顧客を登録できる
  • メールのやりとりが顧客の記録に自動で紐づく
  • 営業会議用の集計が、設定だけで(開発なしで)作れる
  • 見積もりの作成がこのツールの中でできる
  • 同一企業の重複登録を検出できる
  • 日本語でのサポート窓口がある

必須は3つ。任意は7つ。この比率が、この記事でいちばん伝えたいことです。そして、必須の1つ目が「機能」ではなく「毎月見ているものが出せるか」であること。この会社がツールを入れる理由は「案件がいまどうなっているかを、会社として見えるようにする」ことなので、それがそのまま必須になります。どの案件がどの段階にあって、どれが止まっているか。それが一目で見えれば、あとの機能はだいたい任意です。

RFPをお手伝いしていて、圧倒的に多いのが、必須条件が絞り込めないというケースです。あれもこれも必須にしたくなります。現場に聞けば、どの機能も「ないと困る」と言われます。そして、必須が20個、30個というRFPができあがります。拝見すると、正直に言えば「欲張っているな」という印象です。

でも、一つずつ「これがないと、プロジェクトの目的が果たせませんか」と聞いていくと、意外とそうでもないことが多いのです。「あれば便利」「今もできているから次もできてほしい」「他社のツールで見た」。そういうものが、必須の欄に入っています。

必須が多いと、三つのことが起きます。

金額が跳ね上がります。 ベンダーさんは、必須と書かれたものは、標準機能でできなければ開発してでも満たそうとします。対象外になるくらいなら、力技でも対応する。その分が、そのまま見積もりに乗ります。

比べられなくなります。 全部が必須なら、各社の提案は「全部できます」か「辞退します」のどちらかになります。得意不得意の差が見えません。任意条件があるから、「ここはできる、ここは別のやり方を提案する」という差が出て、それが評価の材料になります。

提案が集まりません。 必須ばかりのRFPを受け取ったベンダーさんは、「これはうちでは無理だ」と早い段階で判断します。提案が集まらないとご相談を受けたRFPを拝見すると、必須条件があまりに多い、ということが本当によくあります。

そして、もう一つ。必須が多いと、本当に大事なことを見失います。このサンプルの会社にとって大事なのは、引き継ぎです。それに比べれば、名刺の撮影も、メールの自動紐づけも、あればうれしいことです。そこを並列にしてしまうと、引き継ぎに強いツールと、名刺撮影に強いツールが、同じ点数になります。

ですから、条件を書くときは、こう進めてください。

  1. まず、思いつく条件を全部書き出す(ここは多くていい)
  2. 一つずつ、「これがないと、目的(項目2に書いたこと)が果たせないか」を問う
  3. 果たせないものだけを必須に残す。残りは任意に落とす
  4. 必須が10を超えたら、もう一度問う

この作業は、必ず議論になります。「これを任意にしたら、現場が納得しない」という声が出ます。その議論が、実はツール選びでいちばん大事な時間です。自社が何をいちばん大事にするかが、ここで決まります。

7、8. 規模・データと、予算感・スケジュール——予算は、書けるなら書いてください

【規模とデータ】

項目 内容
利用者 営業15名、営業事務3名、役員4名(参照のみ)
顧客数 取引先約600社、担当者約1,500名
移行するデータ 販売管理システムの顧客マスタ、各営業のExcel(形式は担当ごとに異なる)、現行ツールのデータ(一部)
注意点 同一企業が複数の表記で登録されていることが分かっています。移行前の整理は当社で行いますが、ご提案があればお聞かせください

【予算感】初年度(導入費用と年間利用料の合計)で○○万円程度を想定しています。現行ツールの利用料を含めた見直しを前提としています。この額を超える場合は、理由とあわせてご提案ください。

【スケジュール】○月に選定、○月に利用開始を希望しています。営業の繁忙期(○月〜○月)は避けたいと考えています。

規模とデータは、見積もりの根拠になります。ここがないと、ベンダーさんは安全側に寄せた見積もりを出します。データの汚れ(同じ会社が複数の表記で入っている、など)は、隠さずに書いてください。移行の段階で必ず表に出ます。先に書いてあれば、そこへの提案も返ってきます(この話はツールの乗り換え・導入のときの名寄せに書きました)。

予算は、「書けない」と言われることが多いです。実際、書く会社と書かない会社は半々くらいです。ただ、私は書けるなら書いたほうがいいと考えています。

理由は単純で、予算感が合わない提案は、読む時間がもったいないからです。想定の倍の提案が来て、そこから削る交渉を始めるのは、お互いにつらい。逆に、想定よりずっと安い提案が来て、あとから「それは別料金です」が積み上がるのも、よくある話です。

「予算がまだ決まっていない」という会社でも、実はあたりがついていることが多いです。たとえば、入れ替えの動機が「現行ツールが高い」であれば、現行の利用料やサポート費用、この先数年で見込まれる改修の費用が、そのまま基準になります。その額を「現行の費用を含めた見直しを前提としています」の一文を添えて書く。それで十分です。

9、10. 提案してほしいこと・評価の観点・進め方——評価の観点は、伝えたほうがいい提案が来ます

【提案書に含めていただきたいこと】

  • 当社の「困っていること」を、御社のツールでどう変えられるか(全部でなくて構いません)
  • 必須条件への対応と、任意条件への対応(標準でできる/設定でできる/開発が要る/できない、の区別をつけてください)
  • 導入の進め方と期間、当社側で必要な作業と工数の目安
  • 費用(初期・月額・オプションを分けて)
  • 同規模の製造業での導入事例(あれば)

【評価の観点】次の順に重く見ます

  1. 「困っていること」への理解と、それに対する提案の具体性
  2. 営業が無理なく使い続けられるか(入力の手軽さ、スマートフォンでの使い勝手)
  3. 導入後の支援体制
  4. 費用

【進め方】提出先・提出期限・質問の受付期間と窓口・プレゼンテーションの予定・選定結果の連絡時期。本件は○社にお声がけしています。

評価の観点をRFPに書くかどうかは、会社によって判断が分かれます。私は書くことをお勧めしていますが、社内で検討した結果「伝えない」と決める会社も少なくありません。どちらも間違いではありません。

ただ、伝えたほうが、いい提案が来ます。「費用をいちばん重く見る」と書けば、ベンダーさんは費用を抑えた構成を考えます。「営業が使い続けられるかを重く見る」と書けば、デモの中身が変わります。何も書かなければ、ベンダーさんは自社の得意なところを前に出します。それは当然のことです。

「○社にお声がけしています」の一文は、前の記事で書いたとおりです。ベンダーさんは、何社の中の1社なのかを見て、提案にかける力を決めています。隠さずに書く。その代わり、必須条件を絞って、提案しやすいRFPにしておく。それが、提案を集めるいちばんの方法だと思っています。

ひな形(Word)——使うなら、条件の欄から埋めないでください

ここまでのサンプルを、そのままWordにしたものです。社名や数字を自社のものに書き換えて使ってください。

RFPのひな形(顧客管理ツール乗り換えの一例・Word)をダウンロード

使うときに、一つだけお願いがあります。条件の欄から埋めないでください。 条件から書き始めると、いまのツールでできていることと、他社のツールで見た機能が、そのまま必須の欄に並びます。項目2(なぜいま)と項目3・4(現状と困りごと)を先に書いて、それを見ながら条件を書く。その順番だけは守ってください。

そして、ひな形の分量(A4で数ページ)は、あくまでこのサンプルの会社の分量です。部門がいくつも関わる、基幹システムとのつなぎが多い、といった案件では、現状と困りごとの部分が何十ページにもなります。それは自然なことです。増えてよいのはそこで、必須条件は増やさない。そこだけです。

ポイント

  • RFPに書くのは10項目。 本体は「現状の業務の流れ」と「困っていること」。ここを読んでベンダーさんは提案を組み立てます
  • 「なぜいま」と「前回はなぜ定着しなかったか」を隠さずに書く。 提案の焦点が合います
  • 実現したいことは「姿」を書き、やり方は書かない。 やり方の違いが、そのまま比較の材料になります
  • 必須条件を絞る。これがいちばん大事です。 必須が多いと、金額が上がり、比べられなくなり、提案が集まらなくなります。提案が集まらないRFPの共通点は、ほぼこれです
  • 必須かどうかは「これがないと目的が果たせないか」で判断する。 「あれば便利」「今もできている」は任意に落とす
  • 予算は、書けるなら書く。 的外れな提案を読む時間が減ります。現行の費用があれば、それが基準になります
  • 評価の観点は、伝えたほうがいい提案が来る。 伝えないと決める会社もあり、それも間違いではありません
  • ひな形は一例。 粒度の感覚をつかむために使い、条件の欄からは埋めない

RFPを書く前の段階——いきなり重たいRFPを送らず、先に軽いRFIで声をかける話は、RFPとRFIの違いに書きました。RFPを書くための準備(ヒアリングから文書化までの順番)はRFPを作りたいが、何を書けばいいか分からないに、返ってきた提案をどう比べるかはベンダーから提案が来たが、比較の仕方が分からないにあります。ツールを比べる前に決めておくことは、顧客管理ツール(CRM)の選び方にまとめています。

必須条件が絞れない。現場に聞くと全部必須だと言われる。そういうときは、一度お話しください。外から聞くと、意外とすっと絞れることが多いです。

ツールの相談から始まって、気づけば「自分たちは何屋なのか」を言い直している。そういう仕事を、私はしています。
中山 幸子

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